こんにちは。渋谷区の特定社会保険労務士の高山英哲です。https://www.1roumshi.com/

今でも「解雇」の訴訟や労働審判の事案は、会社側に有利に展開すること極めて少ないと感じています。

透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会(厚生労働省)http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-roudou.html?tid=307309

裁判になった場合、がんばって何とかしょう!
会社が勝つための資料、材料を見つけてアドバイスしょう。。ってスタートしたものの結局は尻つぼみ。

元労働者からの訴訟を受けてから、弁護士さんも加わり気合を入れたものの、途中でやめてしまう。「解雇」の訴訟や労働審判の事案で、会社側が完全勝訴を目指すのは無理とも言われることも少なくありません。

最後は、なんだかあきらめモードが蔓延し、和解で決着。
多くの事案が同じように終結されているでしょう。

今後もこの傾向が続くかどうかわかりません。
ただ「解雇事案」は、会社にとっては、悩ましい事案であることは間違いありません。

そこで本日皆様にピックアップしたのが、解雇無効時における金銭救済(金銭解決)のあり方等を検討するため「透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会」。

これまでに7回の会合が開かれました。

元裁判官からヒアリングを実施し、労働関係の裁判を数多く担当してきた経験から「解雇事案」をめぐる訴訟や労働審判についてそれぞれの傾向や相違点等を述べています。

かなりのボリュームです。
われわれはきっと学ぶことが多々あるといえます。

さっそく、気になったポイントをチェックして行きましょう!

【第6回検討会 議事録】
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000127140.html

(一部を抜粋)

比較的歴史の新しい企業では、もうほとんど退職金がないというのが実態です。このまま資料が出されると、見方によっては「日本の企業における4分の3が当たり前のように退職給付を行っている」というように大きな誤解を招くおそれがあると思いますが、決してそうではない。

30人未満の企業は全くこの調査の対象になっておりませんし、この有効回答である4,211社も、日本で事業展開をする国内企業のごく一部です。ですから、必ずしも全ての4分の3の企業で年金退職給付が当たり前になされているのではないという、その点だけは誤解のないように、丁寧な説明が必要ではないかと思い、発言させていただきました。

解雇のときにどういう保証金を払うかとか、解決金をどうするかということよりも、それ以外のものについてどのような制度なのかということが、多分最初の関心事項だったと思います。そのときに、上のほうから見ると、自己都合であるとか、希望退職であるとかという書き方をしているのですが、日本の場合は定年制というものを敷いており、ヨーロッパの中では最近定年制を廃止する国が幾つも出てきているので、定年制というのは制度自体として認められているのか、認められていないのかというところとの比較も少し考慮する必要があるなと思っています。

解雇をめぐる訴訟と労働審判の傾向、及び相違点についてお話しします。これは私の感覚ですが、やはり訴訟の事案では労働者としては会社で働くことを求めている事案が多いと。ですから、地位確認を求めてくるというような事案が多かったと思います。中には、地位確認と言いながらも、もう別な所で働いて、果たして本当に現職復帰を考えているのかな、どうなのかなと思うのもありますが、大多数はやはり会社で働くことを求めている事案が多かったように思います。

他方、労働審判では、労働者は、会社を辞めることを念頭に、金銭解決を求めているのではないかなと感じる事件がほとんどだったと思います。また、会社で働くことを希望する労働者の方は、労働審判ではなくて、仮処分で地位確認を求めることが多かったように思います。以上は、あくまでもそういう事例が私が担当した事案ではほとんどで、自分の部に来ていた事件を見ている限り、そのようなものが多かったと思います。

労働審判の解雇事案では、大多数はやはり金銭解決を求めている事案が多かったと思います。

次に、訴訟における和解と、労働審判における調停の特徴についてお話します。訴訟での和解ですが、解雇を巡る事案では、やはり裁判官は判決の結論をにらんで心証を固めた上で和解をしているのではないかと思います。

解雇を巡る労働事件の和解率は、一般の民事通常事件に比べると相当高いと思います。訴訟の場合は、やはり心証に基づいて説得しますので、その裁判官が本当にそう思ってそう言っているのであれば、その裁判官に従って和解しましょうかということで、和解率は高いと思います。

裁判官が解雇は無効だという心証を取っている場合に。労働者が金銭和解はどうしても嫌だといっている場合には職場復帰を前提の和解を進めますが、使用者側が職場復帰は認められないということになれば判決になります。そうは言いながらも、労働者が、条件によれば退職ということも考えられるというのであれば、例えば退職金も支払いながら、それを前提に考慮した解決金額を提示して和解ができる場合はあります。事件のうち半分以上は話し合いで解決しているという印象を持っています。

解雇が有効の場合は大体金銭解決ができるケースが多いです。月額賃金の3か月以下ぐらいで和解ができていたケースが多かったと思います。使用者側も、控訴とかいろいろな手間暇を考えるなら、3か月ぐらいならしょうがないなと思っているのではないかとの印象を受けました。

労働審判についてお話しします。労働審判は審理が最大3回、例外的に4回の場合もありますが、3回の審理で終わり、正式な証拠調べをしていないので、おおよその心証、いわばラフジャッチングで調停を進めるという特徴が有ります。

労働審判での解決はケース・バイ・ケースです。労働審判では、裁判官が、労働審判員の方と協議しながら結論を出します。私の経験した労働審判の事案では不思議と使用者側の労働審判員の方がわりと高い額を言って、労働者側の労働審判員の方の方が意外と低い額を言うという印象を持った記憶が残っています。

解決金の基準ですが、これは本当にケース・バイ・ケースであるということは念頭に置いていただきたいのですが、私が考えていたのは、やはり仮処分との対比がありましたので、解雇が無効な場合も、一応金銭解決を提示して、基本は大体1年ぐらいを中心に考えて、それよりプラスしたりマイナスした金額を提示していました。会社側がどうしても辞めてもらいたいという場合には、当然慰謝料的なものとかいろいろなものを加算しながら、ケース・バイ・ケースで決めておりました。

解雇が無効で調停ができない場合は、地位確認も考えられるのですが、一応賃金の1年分等の支払いを命じる審判を出すことが多いです。どうしても、労働者が強く地位確認を求めている場合は、地位確認の審判をする場合もあると思います。

労働審判が始まった当初は、私は、調整が困難な場合は、訴訟になった場合の結論を睨んで、解雇が無効であれば地位確認の審判を、解雇が有効であれば棄却の審判をしていましたそうしたら全部異議が出ました。そこでやり方を改めました。労働審判では金銭解決を前提に話をしているのだから、やはりその話に応じた審判を出したほうがいいのではないかということで、解雇が無効で調停ができない場合でも、金銭解決の方が妥当と思われるときは、月額賃金の1年分、あるいはこれにプラスアルファした額の支払いを命じる審判を出していました。

解雇が有効な場合には、月額賃金の1ないし3か月分を提示しておりました。

調停ができない場合には、申立てを却下するのではなく、使用者側に1か月から3か月ぐらいの賃金を支払えというような審判をしておりましたしかし、どう考えても、救済の余地がない場合には、棄却の審判をしておりました。ただ、まれではあるけれども、本人訴訟の中には、そのような棄却事例がないわけではありません

今、東京地裁はじめ全国の裁判所でどういう運用をしているのかは、私は分かりません。分からないけれども、恐らく、私が先ほど述べたのと同様のやり方をやっているのではないかと推測します。そうしますと、審判を出しても半分ぐらいは異議なく確定しているのではないでしょうか。

解雇の有効性、すなわち、解雇に正当な理由があるかという点につきまして、会社と労働者とは長い付き合いなので、どちらにも言い分がある場合が少なくありません。解雇に正当な理由があるのかどうかについて、心証が4対6であったり、7対3であったり、そこに幅があるケースがあること、すなわち、判断に幅があることが理由の1つと考えられます。

職場復帰をさせようにも、会社の規模が小さい場合には復帰させる場所が見つからない場合もあります。さらには、一旦こじれた関係を修復するのは、非常に困難なケースが多く、仮にその地位を確認してあげたとしても、一緒に仲良くしてくれる労働者というか、仲間がいるような場合はいいのですが、独り孤立しているような場合では、恐らくまた同じようなことが起きる可能性もあります。そのような事例に遭遇したこともあります。

そういう事例を見てきますと、やはりそんなに争うよりも、事案によっては金銭解決もいいのではないかと思ったりもします。

やはり労働審判においては、労働者自身が職場復帰の困難さを認識して、金銭解決を受け入れているケースが多いように思われます。しかし、労働審判でも、労働者本人が退職和解を拒否しているというケースもあります。

解雇事案における解決金の決定の判断要素は何なのかについて述べさせていただきます。恐らく、訴訟、あるいは労働審判をやっている人は同じ考えを持っていると思いますが、解雇が有効か無効か、その確度というか、訴訟であれば、裁判官の心証、労働審判であれば、その委員会におけるその心証が最大の判断要素だと思います。

会社が、この労働者に辞めてもらいたい気持ちの強さ、労働者の方では、この会社にずっと勤務して頑張りたいと思っているのかどうかという点が影響します。また、提示する支払金額、すなわち、訴訟などではバックペイの額がどのぐらいになるかとか、あるいは解決に要する期間は今後どのぐらいかかるかとか、在職期間がどの位かなどを総合的に判断します。労働事件を2、3年もやっていますと、どの程度がストライクゾーンか、つまり相場観が分かってくるのですが、この点は日く言い難しということで、事案ごとに考えていくということしか言いようがありません。

訴訟及び労働審判に対する評価と課題についてお話しします。訴訟は透明で公正な手続ですが、小泉首相が「思い出を裁く、最高裁かな」と、こんなことを言われていていましたが、やはり時間と費用がかかり、コストパフォーマンスが悪いと思います。労働事件では裁判官によって判断の幅が広いように思います。その理由として考えられるのは、正当な理由があるのかどうかなど規範的要件が問題となる場面が多く、評価が入る部分が大きいので、裁判官によって結構結論が異なる場合が、民事通常事件より多い。つまり、労働事件は、当事者にとってリスクの大きい訴訟類型のように思います。

労働審判の最大のメリットは、やはり迅速な解決ですね。かつ、あっせん等に比べれば多額の解決金が得られるということです

最初の在職期間については、解雇が有効であっても無効であっても、その会社に長い間勤務していた人に会社を辞めてもらうのであり長ければ当然、家族もいたりいろいろなことがあるので、やはり在職期間が長い人については、有効無効に関わらずそれなりにプラスに働くのではないかというのが私の考えです。

訴訟、労働審判の傾向は次のとおりです。

「訴訟」事案
労働者は会社で働くことを求める事案が多い(地位確認を求めてくる事案が多い)。

「労働審判」事案
労働者は会社を辞めることを念頭に金銭解決を求める事案が多い。

 「訴訟における和解と労働審判における調停の特徴」「解雇事案における解決金の決定の判断要素」等についても裁判官としての経験に基づいた感想等を述べています。

今さら聞けない「解雇事案」の訴訟や労働審判の傾向がよくわかります!
訴訟、労働審判を理解する上で、いろいろと得るところがありました。

ぜひ確認してみて下さい。

渋谷区の特定社会保険労務士の高山英哲でした。https://www.1roumshi.com/