社会保険労務士の渋谷区の高山英哲です!https://www.1roumshi.com

こんにちは。

今回は、タクシー会社の運転手の歩合給の計算方法に関する労働判例です!

前の投稿で、歩合給と残業代の関係、残業代計算方法を説明したことがあります
今すぐ学ぶ!歩合給と残業代5つの関係、これで理解できる残業代計算方法

①「固定給の時間当たりの賃金額」は固定給の額をその月の所定労働時間で算出いたします。
②「歩合給の時間当たりの賃金額」は歩合給の額をその歩合給を得るために働いた総労働時間
(所定労働時間十時間外労働時間)でそれぞれ割って得た額を合算したものが「時間当たりの賃金額」となります。
③皆勤手当、通勤手当、家族手当は、残業代を計算する基礎賃金からは除きます。
④基本給の1時間当たりの賃金額=基本給÷所定労働時間で計算します。
⑤歩合給の1時間当たりの賃金額=歩合給÷月間総労働時間で計算します


歩合給の給与計算においての賃金規程の違法性が問われました。

具体的にいえば、タクシー会社の歩合給を計算する際に残業代相当額を控除する賃金規則の違法性(労基法37条違反)が問われていた事件です。

最高裁判所は「当然に公序良俗に反して一律に無効とは言えない」としました。

同条に違反するかどうかについて原審では審理がなされていないことを理由に東京高裁に差し戻しをしました。

判決趣旨は次のとおりです。

趣旨:歩合給の計算に当たり売上高等の一定割合に相当する金額から残業手当等に相当する金額を控除する旨の賃金規則における定めが公序良俗に反し無効であるとした原審の判断に違法があるとされた。

平成27(受)1998 賃金請求事件 平成29年2月28日 最高裁判所第三小法廷 判決 破棄差戻

通常、タクシー運転手の賃金(給与)は、一定の基本給と運賃収入に応じて支給される歩合給からなる「歩合給制」が多くの会社で採用されています。

そのため、この事件の確定判決が及ぼす影響が少なくありません!
当然、運転手の残業手当の計算方法やその定め方について見直しを迫られる、タクシー会社が出てきますね。

歩合給を支給されている営業職の方も気になるでしょう。

最高裁判所
国際自動車事件
平成27年(受)第1998号 賃金請求事件 
最高裁判所第三小法廷 平成29年2月28日判決
国際自動車事件(最高裁判所第三小法廷平成29年2月28日判決)(Adobe PDF)

そこで、今回は、歩合給を計算する際に残業代相当額を控除する賃金規則の違法性について、考えていきます。

それでは、早速チェックしていきましょう。

第1次訴訟と第2次訴訟では、東京地裁の見解が、分かれた!

国際自動車事件では、同じ内容を請求する訴訟が次々に提起されています。
原告は、合計人数で200名を超える大きな訴訟となっています。

第2次訴訟では、割増賃金の算出方法を定める労働基準法37条に違反していない。
裁判所は、公序良俗にも反しないとして、原告の意見を斥けて(東京地判平28.4.21)おります。

第1次訴訟と第2次訴訟で裁判所の見解が、まさに分かれたことになります。
難しいですね。

東京地方裁判所
国際自動車事件
平成24年(ワ) 14472号
東京地方裁判所 平成27年1月28日
国際自動車事件(東京地方裁判所平成27年1月28日判決)(Adobe PDF)

 

東京地方裁判所
国際自動車(第2・歩合給等)事件
平成26年(ワ)第26409号 賃金支払請求事件
東京地方裁判所 平成28年4月21日判決
国際自動車(第2・歩合給等)事件(東京地方裁判所平成28年4月21日判決)(Adobe PDF)

 

第1次訴訟の高裁判決(二審)では、地裁判決(一審)を支持したが。。

第1次訴訟の高裁判決(二審)では、地裁判決(一審)が支持されました。会社側に未払い賃金の支払いが命じられたことから、会社側が上告しました。

二審(高等裁判所)
国際自動車事件 
平成27年(ネ) 1166号 
東京高等裁判所 平成27年7月16日

そして、最高裁判決を前に双方の意見を聞く弁論が開かれたのが、平成29年1月31日。通常、一審・二審とは異なる判断がなされる場合、この弁論は、最高裁判決を前に開かれることが多いと聞いております。

やはり、気になります!最高裁判決では「これまでと結論が異なるのでは?」と、私も注目していました!

結果は。。。

原告勝訴の二審判決を破棄、審理を東京高裁に差し戻した。

会社側が主張していたのは、不必要な時間外労働を減らすための賃金規程。

それは、時間外労働割増賃金や深夜労働割増賃金、休日労働割増賃金、交通費と同額を、歩合給から差し引く仕組みでした。

平成28年2月28日、実質的に残業代が支払われない会社の賃金規程が違法で無効だとして、タクシー運転手が未払い賃金の支払いを求めた訴訟の上告審判決。

最高裁第3小法廷(大谷剛彦裁判長)は2月28日、無効としたー、二番判断を覆して有効と判断し、原告勝訴の二審判決を破棄、審理を東京高裁に差し戻しました。

いかがですか?

タクシー運転手の「歩合給」をめぐる注目裁判。「歩合給だから割増賃金なし」は有効?無効?様々な意見、考えがあると思います。

同社の賃金規則では残業時間(割増賃金)が増えたとしても歩合給の部分が減ってしまう仕組み。

この仕組みについて最高裁は「当然に公序良俗に反して無効とは言えない」と会社側に有利な判決を下したことから、歩合給制について俄然注目が集まっています。

歩合給制は運送業界を中心に多くの業種・職種で採用されています。

しかし、制度自体に曖昧な部分が多く、計算方法も非常に複雑なため、導入・運用する際にはクリアしなければならない課題が多々あります。運用は容易ではありません。

あなたも感じませんか?

国際自動車事件では、同じ内容を請求する訴訟が続いて提起されいます。今後も、注目していきます!

 

東京地方裁判所
国際自動車事件
平成24年(ワ) 14472号
東京地方裁判所 平成27年1月28日
国際自動車事件(東京地方裁判所平成27年1月28日判決)(Adobe PDF)

 

東京地方裁判所
国際自動車(第2・歩合給等)事件
平成26年(ワ)第26409号 賃金支払請求事件
東京地方裁判所 平成28年4月21日判決
国際自動車(第2・歩合給等)事件(東京地方裁判所平成28年4月21日判決)(Adobe PDF)

 

二審(高等裁判所)
国際自動車事件 
平成27年(ネ) 1166号 
東京高等裁判所 平成27年7月16日

 平成27(受)1998 賃金請求事件 平成29年2月28日 最高裁判所第三小法廷 判決 破棄差戻

最高裁判所
国際自動車事件
平成27年(受)第1998号 賃金請求事件 
最高裁判所第三小法廷 平成29年2月28日判決
国際自動車事件(最高裁判所第三小法廷平成29年2月28日判決)(Adobe PDF)

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