渋谷区,社会保険労務士の高山英哲です。

みなさん、こんにちは。高山英哲

通勤は電車、バスだけではない。急激に変化している。

最近は健康ブームにもあやかり自転車通勤も珍しくない。それにともなって、通勤中の事故も多様化している。

私の顧問先でも通勤中の交通事故の相談事例は少なくない。

あなたの会社でも事例はあるだろう。自家用車、社用車などの交通事故。

最近は原付バイクの事故も多くその都度、対応を考える。

そこで今回は私とあなたで通勤途中の交通事故についての対応、課題などを学んでいく。

知っておきたい、シップルな鉄則、技術を習得する。


通勤途中の交通事故、労働基準監督署から学んだ通勤災害の正体

言うまでもなく、通勤途中の交通事故ならば、労災保険を考える。

労災保険とは、労働者の「業務」または「通勤」による災害に対して所定の給付を行うことを目的としているものである。

まずは「通勤」による災害である、これに絞って解説をしよう。

それでは「通勤」の定義から確認する。

「通勤」とは労働者が就業に関し、次に掲げる移動を、合理的な経路および方法により行うことを指し、業務の性質を有するものは除かれる(労災保険法7条2項)。

より具体的いえば、次の3点だ。

①住居と就業の場所との間の往復②厚生労働省令で定める就業の場所から他の就業の場所への移動③①に掲げる往復に先行し、または後続する住居 間の移動(厚生労働省令で定める要件に該当するものに隕る)

このことから、通勤災害とは、労働者の通勤による負傷、疾病、傷害または死亡をいう(労災保険法7条1項2号)。

 

「通勤災害」と「交通事故」の関係で生まれてくるもの。

あなたは通勤災害については、理解できた。

ここでは押さえておきたいことがある。

「通勤災害」と「交通事故」の関係で生まれてくるもの。

それは何か。

「第三者行為災害」だ。

あなたも聞いたことがある、だろう。

交通事故のように被災労働者やその事業主以外の第三者の行為などによって発生した業務災害や通勤害を「第三者行為災害」という。

第三者行為災害であっても通勤災害を労災として認定されることは可能だ。

それゆえ第三者行為災害の場合には、被災労働者は労災保険給付を受けることができる。

加えて当該第三者に対して民法上の損害賠償請求を行うこともできる。

しかしながら、一つの損害について複数から補償を受けることは不合理である。

これは、あなたも理解できるだろう。ダブルで補償を受けたい気持ちはわからないでも、ない。

そこで労災保険制度においてはこれらを調整することになっている。

少し難しい話になる。聞き流してもいいから説明すると、こうだ。

労災保険法12条の4第1項には、「政府は、保険給付の原因である事故が第三者の行為によって生じた場合において、保険給付をしたときは、その給付の価額の限度で、保険給付を受けた者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得する」とある。

同条2項には、「前項の場合において、保険給付を受けるべき者が当該第三者から同一の事由について損害賠償を受けたとき政府は、その価額の限度で保険給付をしないことができる」と定められている。

 

示談金を受け取っている場合、いない場合

あなたは通勤災害については、理解できた。

ここからが重要だ。絶対に忘れてはならない点ことが、ひとつある。

それは、何か。

ズバリ!通勤中の事故で会社の労働者が示談金を、その場で受け取っている場合の対応だ。

「示談する、しないは本人の意思の問題でしょ」と反論する人もいるかもしれない。

確かに、会社が介入すべきではないし、本人が決めることである。

しかしながら、法律、通達などの知識が不足しているなかで早急の結論出しは決していいとはいえない。

かりに第三者から既に示談金を受け取っている場合は、労災保険法12条の4第2項により既に受け取った分が控除される。

もちろん、それを上回る金額だけが労災保険給付を受けることができると。。読めなくは、ない。

そこで、労働者にとって厳しい内容の通達がある

解説しよう。

この通達は流さないで、じっくり読んで欲しい。

①示談が真正に成立していること

②その示談内容が、受給権者の第三者に対して有する損害賠償請求権(保険給付と同一事由に基づくものに限る)の全部の填補を目的としていること

この二つの要件を満たす場合には、それ以上の労災保険給付を受けることができないこととなっている(昭38. 6.17 基発687)。

この通達から言えることは、実際の損害が示談した金額以上の場合でも、労災保険給付を受けられなくなる、ということだ。

 

 

第三者行為災害で忘れてはいけないことは、ひとつだけ

最後に整理しておこう。

通勤災害は、業務災害と異なり事業主に労働基準監督署長への届け出義務はない。

さらに被災労働者も労働基準監督署長への報告義務も発生しない。

しかしながら示談に応じるか否かは、被災労働者が判断することとなる。

だとすると、後々になって被災労働者が後悔しないためにすることは何か。

それは、通勤中の事故は、会社へ遅滞なく報告義務を課すことだ。

第三者行為災害で忘れてはいけないことは、これだけである。

被災労働者にとっては事故で混乱することも、あるだろう。

もし私だったら。。。叫んだり、泣いたり尋常ではないはずだ。

だが、それでも何も考えずに安易に示談に応じた場合、労災給付を受けれなくなる事態を引き起こす可能性がある。

決して会社へ報告をしないで示談をしてはならない。当然労働者にとっては不利益を被ることとなる。

したがって通勤中の事故、会社への報告義務は不可欠である。

最後までお読みいただきありがとうございました。

社会保険労務士、渋谷区の高山英哲でした
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