渋谷区の社会保険労務士です。

高山英哲こんにちは、高山英哲です。

あなたと、今回学ぶことは「飲食業・外食産業の就業規則と労務管理、過労死を回避するための、課題」である。

先日、厚生労働省より「平成29年版過労死等防止対策白書」が公表された。

「平成29年版過労死等防止対策白書」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000179592.html
http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/karoushi/17/index.html

白書では、過労死等が多く発生している業種として「外食産業」が挙げられた。

11月は「過重労働解消キャンペーン」です。


これを今、お読みのあなたは、「うちの店舗は関係ない」と思いながらも、もし「過労死が起こったら、どうしょうか」と。

そんな思いを抱えているのでは、ないだろうか。

そこで、今回はあなたと「過労死から回避するための方法」を摘出し、解決策の出発点を考察していく。

あなたと一緒に、ステップ・バイ・ステップで、意見交換をしながら、すすめる。

特に今まで「過労死」の問題点を、理解していない場合、必ず大きな知識を得るはずだ。

早速、すすめていくこととする。

 

ステップ1= まず「過労死」の正体を、明らかにする

そもそも「過労死」とは、何か。

「過労死」とは、仕事の疲労やストレスが原因となり、脳・心臓疾患等の疾病を発症し死亡したり、精神障害等で自殺すること(過労自殺)だ。

脳・心臓疾患は本来、血管病変等が長い年月の生活の営みの中で形成される。これが進行し増悪(ぞうあく)するといった自然経過をたどり発症するものである。

さらに業務で過重負荷が加わることで血管病変等が自然経過を超えて増悪する。

非常に怖いことに、この結果、脳・心臓疾患が発症する場合があると考えられる。疾患による死亡事案の労災認定に関して、脳・心臓疾患の発症に影響を及ぼす過重負荷として、業務を通じた長時間にわたる疲労の蓄積も考慮することに、なる。

 

1-1 あなたが、押さえておく、飲食店の「安全配慮義務」とは?

使用者は労働者が過重労働により心身の健康を損なわないよう注意する義務を負っている(電通事件 最高裁二小 平12. 3.24判決 労判779号13ページ)。

具体的には、労働時間、休憩時間、休日、休憩場所等について適正な労働条件を確保すること。さらに健康診断を実施すること。

こうすることで、労働者の年齢、健康状態等に応じて従事する作業時間および内容の軽減、就労場所の変更等適切な措置をすることが、必要である。

もし、これらの措置を講じず、従業員が過労死もしくは過労自殺に至った場合、あなたの会社は、安全配慮義務違反に問われることになる。

過労死認定基準では、次のような「業務による明らかな過重負担を受けたことにより発症した脳・心臓疾患」を業務上の疾病として取り扱うこととしている。

引き続き、解説しょう。

 

1-2 発症直前から前日までの、異常な出来事

過労死認定基準では、次のような「業務による明らかな過重負担を受けたことにより発症した脳・心臓疾患」を業務上の疾病として取り扱うことになる。

まず、発症直前から前日までについてだ。

この期間に、発症状態を時間的および場所的に明確にし得る「異常な出来事」が、あったか、どうかだ。

よく思い出して、ほしい。

具体的に言うと「極度の緊張、興奮、恐怖、驚愕(きようがく)等の強度の精神的負荷を引き起こす突発的または、予測困難な異常な事態等」が発生したか、していないかだ。

 

1-3 短期間の過重業務

次に、発症に近接した時期において、特に過重な業務に就労した(短期間の過重業務)か、否かだ。

「特に過重な業務」とは、日常業務(通常の所定労働時間内の所定業務内容)に比較して特に過重な身体的、精神的負荷を生じさせたと客観的に認められる業務をいう。

また、「発症に近接した時期」とは、発症前おおむね1週間をいう。

具体的な負荷要因は以下のとおりである。客観的・総合的に判断することになる。

労働時間

不規則な勤務

拘束時間の長い勤務 

出張の多い勤務 

交替制勤務・深夜勤務 

作業環境 

精神的緊張を伴う業務

 

1-4 長期間の過重業務

最後は、発症前の長期間にわたって、著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務に就労したこと(長期間の過重業務)、否かだ。

評価期間は発症前おおむね6ヵ月間の範囲で、業務量、業務内容、作業環境等を十分に考慮し、客観的・総合的に判断する。

特に労働時間については、認定基準において次のように指摘されている。

発症前1ヵ月間ないし6ヵ月間にわたって1ヵ月当たりおおむね45時間を超える時間外労働が認められない場合は、業務と発症との関連性が弱いが、時間外労働時間が長くなるに従って序繰り返しに強まる。

発症前1ヵ月間におおむね100時間または、発症前2ヵ月間ないし6ヵ月間にわたって1ヵ月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強い。

 

 ステップ2= 飲食業・外食産業で、過労死が発生する理由と、今後の課題

ステップ1で、あなたは「過労死」の正体、その姿を理解できたはずだ。

ここからは、飲食業・外食産業で、過労死が発生する理由を考えていくこととする。

何だかんだいっても所定外労働。要するに残業時間の多さが理由である。

あなたが、最初におさておくことは、この「残業が発生する」要因だ。

 

2-1 アンケート結果による「残業が発生する」要因


店長、スーパーバイザーなどからのアンケートで「残業が発生する」要因だ。

アンケートの上位結果は次のとおりである。

「人員が足りないため」

「予定外の仕事が突発的に発生するため」

「業務の繁閑の差が激しいため」

「担当店舗が複数あり(担当エリアが広大で)、業務が多いため」

 

 

2-2 過労死を回避するための課題とは

続いて、企業において、過労死防止に向けた取組みをするに当たり、どのような課題があるか。

びっくりするような、回答だが。。みていこう。

業種別にみると、「酒場、ビヤホール店」では「売上げや収益が悪化するおそれがある」が、それ以外の業種においては「人員不足のため対策を取ることができない」と回答した企業の割合がそれぞれ最も高かった。

「平成29年版過労死等防止対策白書」111頁

 

2-3 気になる疲労蓄積度、ストレスと向き合う

正規雇用者について、直近1か月間の勤務の状況や自覚症状に関する質問により判定は、こうだ。

疲労蓄積度(仕事による負担度)が「高い」、「非常に高い」と判定される者の割合を職種別にみると、「スーパーバイザー等」(22.5%)が最も高い。次いで「店長」(22.4%)、店舗従業員(19.2%)の順であった。

一方、非正規雇用者の店舗従業員では、「高い」、「非常に高い」と判定される者の割合は7.3%であり、正規雇用者の店舗従業員と比較しても低く、「低い」と判定される者の割合は65.7%であった。

正規雇用者の業務や業務以外のストレスや悩みの有無について、職種別にみると、「ある(あった)」の割合は、「店長」が65.3%で最も高い。次いで「スーパーバイザー等」が62.2%「店舗従業員」が60.3%であった。

非正規雇用者の店舗従業員の「ある(あった)」の割合は、52.6%であり、正規雇用者の店舗従業員より低かった(第2-40 M)。さらに、正規雇用者の「業務関連のストレスや悩みがある(あった)」の割合は同様に、「店長」が64.3%で最も高く、次いで「スーパーバイザー等」が60.4 %、「店舗従業員」が58.1%であった。非正規雇用者の店舗従業員の「業務関連のストレスや悩みがある(あった)」の割合は、44.4%であった

やはり、責任度合いによって、ストレスの違いは明らかだろう。

 

2-4 スーパーバイザー、店長が残業する理由

飲食業・外食産業の企業で売上動向が減少傾向であると回答した割合、1店舗あたりの来客数が減ったと回答した割合が比較的高い。しかしながら、所定外労働が発生する理由として「人員が足りないため」と回答した割合がも高い。また正規雇用者の担当店舗の半数が無休。ゆえに休日出勤が行われている状況が認められた。

職種ごとの特徴として、「スーパーバイザー等」及び「店長」について、「店舗従業員」と比較すると、①労働時間が長いこと、②疲労蓄積度が高いこと、③客からの理不尽な要求・クレームに苦慮することが多いことが認められた。

このことから、役職者は「職場の人間関係」にストレスや悩みを感じているといえる。過労死等の防止のためには、特に「店舗従業員」を適正に配置することが基本的だ。

2-5 飲食業・外食産業の今後の課題

業務関連のストレス要因に対応するためには、それぞれの事業場におけるストレス要因を把握が不可欠である。

また職種ごとの特徴を踏まえた対応が効果的と考えことだ。そのためには、ストレスチェックを行い、労働者本人にストレス状況の気付きを促すとともに、事業者は集団分析を活用することにより職場環境改善につなげていく取組みが必要である。

さらに、セルフケアやラインによるケアに結びつける等のメンタルヘルス対策を積極的に活用することも有効だ。「スーパーバイザー等」及び「店長」については、本社(本部)等の店舗運営に関する支援に満足していない者も一定数認められた。

よって、労災認定事案の分析においても、少人数の職場における現場責任者の拘束時間の長さや休日の少なさが認められ、「スーパーバイザー等」及び「店長」は疲労蓄積度が高い者も多い。役職者への支援をより進めていくことも必要であり、店舗運営面での支援だけでなく、健康管理等の観点からも企業としての支援が一層重要だ。

あなたの会社の、改善の一助になれば幸いである。

最後まで、お付き合いいただき、ありがとうございました。

 「平成29年版過労死等防止対策白書」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000179592.html

http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/karoushi/17/index.html

 

11月は「過重労働解消キャンペーン」です。

 

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