渋谷区の社会保険労務士です。

高山英哲こんにちは、高山英哲です。久しぶりの投稿です。

2025年は最初で最後の投稿です。なんかワクワクします。。

あなたと、今日学ぶことは「スポットワーク活用の落とし穴、知らないでは済まされない!経営者が今すぐ確認すべき5つの労務管理ポイント」です。

急な人手不足に対応できる「スポットワーク」。その手軽さから、多くの企業で活用が急速に広がっています。

必要な時に必要な人材を確保できるこの仕組みは、現代のビジネス環境において非常に強力なツールと言えるでしょう。

しかし、その利便性の裏側には、事業主が負うべき重大な法的責任が潜んでいます。アプリを介した手軽なマッチングであるため、つい労務管理の基本を見落としてしまいがちですが、スポットワークは紛れもない「雇用契約」です。厚生労働省も注意喚起するように、この事実は決して軽視できません。

「知らない」では済まされない
本記事では、新しい働き方を専門とする社会保険労務士として、スポットワーク活用時に特に見落とされがちで、かつ法的なリスクに直結する労務管理のポイントを5つに絞って解説します。自社の運用が適切かどうか、今すぐ確認していきましょう。


ステップ1:驚きの事実:アプリは仲介役。労働契約の相手は「あなた」です

まず理解すべき最も重要な点は、労働契約の当事者が誰であるか、という点です。

スポットワークでは、労働契約はアプリの運営会社と結ばれるのではなく、仕事を依頼した「事業主」と、応募してきた「スポットワーカー」との間で直接成立します。

スポットワークのプラットフォーム(仲介事業者)は、あくまで募集と応募を仲介し、場合によっては賃金の立替払を代行するだけの存在です。

法的な雇用主は、ワーカーを直接指揮命令する事業主自身となります。

つまり、労働基準法をはじめとする労働関係法令を遵守する義務は、すべて事業主にあるのです

この基本構造を誤解していると、後述するすべての責任の所在を見誤ることになります。

 

ステップ2:応募」=「契約成立」? スピード成立の裏に潜む責任

スポットワークの多くは、面接などを介さず、先着順で採用が決定します。

このスピーディーなプロセスには、法的に重要な意味が隠されています。

多くの場合、ワーカーがアプリ上で求人に「応募」した瞬間に、双方の合意があったと見なされ、労働契約が成立します。

労働契約は、労働者が事業主に使用されて労働し、事業主がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び事業主が合意することによって成立します。(労働契約法第6条)

これは、応募があった時点で、事業主は労働基準法等の法律に拘束されることを意味します。

従来の採用活動にあったような、面接や内定通知といった時間的な猶予はありません。

クリック一つで契約が成立し、即座に雇用主としての責任が発生するという事実を、事業主は重く受け止める必要があります

ステップ3:「直前のキャンセル」は違法?安易な取り消しには休業手当が必要

「急に予定が変わったから」といって、一度成立した契約を事業主の都合で一方的に取り消すことはできません。

天災事変など、やむを得ない事由がある場合を除き、事業主の都合によるキャンセル(解約)や、当日の早上がりを命じることには法的なペナルティが伴います。

これは労働基準法第26条に定められる「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当し、事業主はワーカーに対して平均賃金の60%以上の「休業手当」を支払う義務が生じます。

もちろん、休業手当の代わりに、その日に支払う予定だった賃金の全額を支払うことも問題ありません。

スポットワークの「気軽さ」というイメージとは裏腹に、安易なキャンセルはワーカーの生活を脅かすだけでなく、事業主にとって直接的な金銭的負担となることを忘れてはなりません。

ステップ4:給料の対象は「作業時間」だけではない!着替えや待機も労働時間

賃金の支払い対象となる「労働時間」の定義を正しく理解することも極めて重要です。

給与を支払うべき時間は、実際に作業を行っている時間だけに限りません。

事業主の指揮命令下にあると客観的に評価される時間は、すべて労働時間に含まれます。

具体的には、以下のような時間も労働時間として扱わなければなりません。

• 準備行為: 事業主が義務付けた制服への着替えなど、業務に必要な準備を行う時間
• 後始末: 業務終了後に行う清掃など、業務に関連した後片付けの時間
• 待機時間: 事業主の指示により、すぐに作業に取り掛かれる状態で待機している時間

これらの時間は、求人募集の際に設定する始業・終業時刻に含め、当然ながら賃金の支払い対象としなければなりません。

この点を曖昧にしていると、賃金未払いとして労働トラブルに発展する典型的な原因となります。

 

ステップ5:給料の対象は「作業時間」だけではない!着替えや待機も労働時間

副業としてスポットワークを行うワーカーの労働時間管理は、特に複雑な問題です。

労働基準法第38条1項では、事業主が異なる場合でも労働時間は通算され、法定労働時間を超えた分については割増賃金(残業代)が発生すると定められています。

しかし、スポットワークを利用する事業主が、ワーカーの本業の労働時間をすべて把握するのは現実的ではありません。

この点について、厚生労働省の通達(令和2年9月1日基発0901第3号)は非常に重要な見解を示しています。

それは、事業主はワーカーの本業の労働時間を積極的に調査する義務まではなく、労働時間の通算義務は、あくまで「労働者からの申告」によって発生するというものです。

ある仲介事業者が行政の見解に基づき回答した内容が、この点を明確に示しています。

「労働者からの申告等がなかった場合には労働時間の通算は要せず、また、労働者からの申告等により把握した他の使用者の事業場における労働時間が事実と異なっていた場合でも労働者からの申告等により把握した労働時間によって通算していれば足りる」これは、事業主にとって過度な事務負担を軽減する重要なルールです。

法律の原則は存在しつつも、その運用はワーカーからの申告が起点となるのです。

もちろん、申告があった場合には、誠実に対応し、通算した上で適切に割増賃金を支払う義務があります。

 

最後に:便利さの先にある、経営者の覚悟

スポットワークは、間違いなく強力で便利な人材確保の手段です。

しかし、それは法的な責任を回避できる「抜け道」ではありません。

アプリを介した手軽な雇用形態であっても、そこには労働契約法や労働基準法といった法律が厳格に適用される、正式な雇用関係が存在します。

本記事で解説した5つのポイントは、氷山の一角に過ぎません。

これらに加え、労働条件の書面による明示義務、労働災害に備える労災保険の適用、そしてハラスメント防止措置といった、通常の雇用と何ら変わらない責任が事業主には課せられています。

これらの基本を理解し、遵守する覚悟があって初めて、スポットワークの利便性を真に享受することができるのです。

最後に、経営者の皆様に問いかけます。 「あなたの会社のスポットワーク活用法は、本当に法律を守れていますか?」

 

 

 

 

 

 

最後まで、お付き合いいただき、ありがとうございました。

 渋谷の社会保険労務士の高山英哲でした。お客様皆様の声
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