よくわかるM&Aの労務DD:義務的調査項目 割増賃金計算方法を、今回は考察していきます。
こんにちは。渋谷区の特定社会保険労務士の高山英哲です。https://www.1roumshi.com/

今日は、よくわかるM&Aの労務DDの3回目です。
今回からは、M&Aの労務DDの具体的な実務を考えていきます。

M&Aの労務DD:義務的調査項目の未払い賃金:義務的調査項目の未払い賃金:割増賃金計算方法を、皆様と一緒に考えていきましょう。

いきなり実務といっても、混乱すると思います。そこで、義務的調査項目の未払い賃金、割増賃金計算方法を考察する前の基礎知識を、あなたと一緒にチェックしていきましょう。

いいですか?

毎日のように、報道される未払い賃金のニュース。あなたも感じることが、あるでしょう。

あらかじめ、労働契約や就業規則で定められた賃金を、所定の支払日に支払わなかった場合には、その使用者は、労働基準法に違反することになります。(労働基準法第11条、労働基準法第24条)

これが、未払い賃金です。

未払賃金があるときは、まず支払われなかった賃金の種類(定期賃金、諸手当、賞与等)、金額、未払の理由、支払の根拠となる規程の有無やその内容を確認する必要があります。

それでは、対象となる賃金を、皆様と一緒に考えていきましょう。

通常、未払賃金の対象となる賃金は、次のとおりと考えます。

未払賃金の対象となる賃金
①定期賃金(毎月の給与)
②退職金
③一時金(賞与・ボーナス)
④休業手当(労働基準法第26条)
⑤割増賃金(労働基準法第37条)
⑥年次有給休暇の賃金(労働基準法第39条)
⑦その他労働基準法第11条に定める賃金に当たるもの

*④⑤⑥の未払については、労働者の請求により裁判所が付加金の支払を使用者に命ずることができます。(労働基準法第114条)

なお、賃金などが支払われない場合、本来支払われるべき日の翌日から、遅延している期間の利息に相当する遅延損害金(年利6%)がつくこととされています。(商法第514条)

注意してくださいね。

また、退職した労働者の場合には、賃金のうちその退職の日(支払日が退職後の場合には、その支払日)までに支払われなかった部分には、年14.6%の利息がつくこととされています。

ここも、おさえておきましょう。

この利息がつく賃金には、退職金は含まれませんが、賞与は含まれます(賃確法第6条)。
これら遅延損害金一遅延利息は、民事上の請求権です。

昨今の労働紛争事案では、民事上の請求について主張するケースも少なくありません。
労務DDでは、あらかじめチェックしておきましょう。

割増賃金計算方法は、ここで取り上げることはなく、ご存知だと思います。割増賃金は3種類あります。
復習の観点から、おさえておきます。

項目 支払う条件、考え方 割増率
時間外労働割増賃金 法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えたとき25%以上
時間外労働が限度時間(1か月45時間、1年360時間等)を超えたとき25%以上(※1)
時間外労働が1か月60時間を超えたとき(※2)50%以上(※2)

(※1)25%を超える率とするよう努めることが必要です。
(※2)中小企業については、当分の間、適用が猶予されています。

項目 支払う条件、考え方 割増率
休日労働割増賃金 法定休日(週1日)に勤務させたとき35%以上

 

項目 支払う条件、考え方 割増率
深夜労働割増賃金 22時から5時までの間に勤務させたとき25%以上

支払う条件、割増率は、あらかじめ確認をしておきましょう。

時間外労働の割増率[所定労働時間が午前9時から午後5時(休憩1時間)までの場合
 17:00~18:00⇒1時間あたりの賃金×1.00×1時間 法定時間内残業
 18:00~22:00⇒1時間あたりの賃金×1.25×4時間 法定時間外残業
 22:00~5:00⇒1時間あたりの賃金×1.50(1.25十0.25)×7時間 法定時間外残業十深夜

いかがですか?

そんなの、知ってるよー 遠くから声が聞こえてきます。。
ご存知の方、知識がある方も、復習の観点からおさえてくださいね。

義務的調査項目の未払い賃金:割増賃金計算方法を考察する前の基礎知識を確認できたと思います。
次回は、具体的な事例に基づいて、皆様と一緒に考察していきましょう。

【参考】:しっかりマスター「労働基準法」割増賃金

渋谷区の特定社会保険労務士の高山英哲でした。https://www.1roumshi.com/