渋谷区の社会保険労務士です。

高山英哲こんにちは、高山英哲です。

あなたと、今日学ぶことは「仮眠時間、着替え、朝礼は、労働時間か、否か」である。

イオンディライトセキュリティ事件の労働判例から考察する。

私の事務所へも「仮眠時間、着替え、朝礼時間は、労働時間か、否か」の質問が多々ある。そのたび、顧問先の皆様と協議をしている。

これを今、お読みのあなたは、「うちの会社では、仮眠時間、着替え、朝礼時間は労働時間と考えていない、けど。。」と思いながらも、「もし、訴訟になって裁判所から労働時間と指摘されたら、どうしょう。。」と。そんな思いを抱えているのでは、ないだろうか。

当然、未払い残業代として多額の賃金を支払う可能性だって、ある。

そこで、今回はあなたと「仮眠時間、着替え、朝礼時間」が労働時間か、否かを摘出し、解決に向け、アクセルを踏む。是非ついてきて欲しい。

私からの提案は、シンプルだ。

あなたと一緒に、ステップ・バイ・ステップで、意見交換をし、私たちで解決策をみつける。

特に今まで「労働時間」の問題点を、理解していない場合、実践して頂ければ驚くほどの成果を得られるはずだ。

ぜひ参考にして欲しい。

それでは、早速、すすめていくこととする。

審判

一審(地方裁判所)

裁判所名

千葉地方裁判所

事件番号

平成27年(ワ)1447号

裁判年月日

平成29年5月17日

裁判区分

判決

裁判文

イオンディライトセキュリティ事件,判決文(千葉地方裁判所,平成29年5月17日)PDF(Adobe Acrobat)

参考条文

労働基準法第34条(休憩)PDF(Adobe Acrobat)


ステップ1= 「労働時間」の正体を、ガイドラインから、明らかにする

そもそも「労働時間」とは、何か。

その答えはズバリ!「 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(平成29年1月20日策定)」で、こういっている。

労働時間とは「使用者の指揮命令下に置かれている時間」である。

さらに「使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間」も労働時間だ。

例えば「参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間」は労働時間に該当する。

リーフレット『労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン』

1-1 なぜ、会社、職場で、労働時間か、否かを悩むのか?

労働時間か、否かは、客観的に定まるものだ。

よって就業規則に「朝礼時問は労働時問ではない」の記載も、労働基準法的には、意味がない。

もし、あなたが「うちの会社の就業規則、労働契約書、労働条件通知書に、ちゃんと記載してあるから、大丈夫だ」、と考えていたら。

その考えは、今すぐ変えてほしい。

たしかに、就業規則、労働契約書、労働条件通知書への明示、周知は必要だ。

しかしながら裁判所、労働行政は「実態」に即して、判断することになる、からだ。

したがって、「就業規則に書いてあるからOK」って考えから、今すぐ、抜け出すべきだ。

なぜ、会社、職場で、労働時間か、否かを悩むのか?

上記のガイドラインでは,「労働時間とは使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいい使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たる」といっている。

しかし、労働裁判の判例みれば、この考えは、同じではない。

1-2 あなたが、裁判から、学ぶ「労働時間」

それでは、裁判から、学ぶ「労働時間」とは、何か。

解説しょう。

裁判実務において、労働時間とは「義務付けの程度」と「職務制の程度」で判断する。

※参考【明示または黙示の義務付けがあったとまでは評価できないが,行わざるを得ない場合(三菱重工長崎造船所事件の最高裁調査官解説205頁)】。

難しい言いかただが「労働を、事実上、余儀なく、されている」「業務に、密接に、関連がある」で、判断する。

私がいいたことは「労働が全くの【任意】であれば、労働時間ではない。業務にあまり【関係】がないのであれば、労働時間ではない」ということだ。

同じような事例でも、事案が違えば、結論が真逆になることも、少なくない。

ここは、押さえておこう。


1-3 仮眠時間、着替え、朝礼時間が問題となる、理由

ここからは、ガイドラインをチェックしていこう。「仮眠時間、着替え、朝礼時間」は、なんていっているのか。

ガイドラインでは「使用者の指示により,就業を命じられた業務に必要な準備行為(着用を義務付けられた所定の服装への着替え等)や業務終了後の業務に関連した後始末(清掃等)を事業場内において行った時間」は労働時間として扱わなけれぱならないと記載されている。

要するに、労働時間と、いっている。

「必要な準備行為」「業務終了後の業務に関連した後始末」は労働時間なのだ。

んーーー。

となると「仮眠時間、着替え、朝礼時間」は、労働時間、ということになるだろう。

1-4 それでも、この準備行為と後始末は、労働時間では、ない

準備行為や後始末が「業務と密接に関連している」「指示やマニュアルの記載ある」「実施しない場合の注意制裁等がある」であれば、労働時間と認めらる。

でも、例外は、ある。

つまり、絶対に、準備行為や後始末が、労働時間かといえば、決してそうではない。

具体的に、解説しょう。

混乱するかもしれないが。。ついてきて欲しい。
 
業務に密接に関連していない時間は労働時間では、ない。例えば、入門から事業場までの移動時間などだ。

また更衣室はあるが、社内で着替る指示がなく、作業着で通勤する者が多い場合はどうか?

このケースでは、会社で着替える社員がいたとしても「着替え時間」は労働時間では、ない。

さらに、偶々ある事業場で一部の職貝が早朝に来て掃除の時間は、どうだろう?

会社が「黙認」「推奨」した事情がない場合は,掃除時間は労働時間とはなら、ない。

最後に、準備行為や後始末にタラタラと長時間かける従業員がいたら、どうか?

社会通念上当該行為に要する時問(普通にやればどの程度の時問でできるかという時問)が労働時問と、なる。

ん~。。。

ここは、多くの方が、うなってしまうかも、しれない。

 

ステップ2=労働時間は「タイムカード」ではなく「労働実態」で把握する

このように、労働時間か否かで、悩むのは、どうしてか?

その理由は、簡単だ。

局面別に、その判断事項が、バラバラだからだ。

それでは、「労働時間の把握」方法は、どうすれば、いいか?

これは、あなたと一緒に、考えていこう。

2-1 ガイドラインから考察する

まず、ガイドラインには、どうか書いあるのか。

端的いえば、次の3点である。

(1)始業・終業時刻の確認及び記録使用者は、労働時間を適正に把握するため、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、これを記録すること。

(2)始業・終業時刻の確認及び記録の原則的な方法

使用者が始業・終業時刻を確認し、記録する方法としては,原則として次のいずれかの方法によること。

ア 使用者が,自ら現認することにより確認し,適正に記録すること。

イ タイムカード,ICカード,パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し,適正に記録すること。

(3)自己申告制により始業・終業時刻の確認及び記録を行う場合の措置

上記(2)の方法によることなく、自己申告制によりこれを行わざるを得ない場合、使用者は次の措置を講ずること。

ア 自己申告制の対象となる労働者に対して、本ガイドラインを踏まえ、労働時間の実態を正しく記録し、適正に自己申告を行うことなどについて十分な説明を行うこと。

イ 実際に労働時間を管理する者に対して、自己申告制の適正な運用を含め、本ガイドラインに従い講ずべき措置について十分な説明を行うこと。

ウ 自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること。特に、入退場記録やパソコンの使用時間の記録など、事業場内にいた時間の分かるデータを有している場合に、労働者からの自己申告により把握した労働時間と当該データで分かった事業場内にいた時間との間に著しい乖離が生じているときには、実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること。

エ 自己申告した労働時間を超えて事業場内にいる時間について、その理由等を労働者に報告させる場合には、当該報告が適正に行われているかについて確認すること。その際、休憩や自主的な研修、教育訓練。学習等であるため労働時間ではないと報告されていても、実際には、使用者の指示により業務に従事しているなど使用者の指揮命令下に置かれていたと認められる時間については、労働時間として扱わなければならないこと。

オ 自己申告制は、労働者による適正な申告を前提として成り立つものである。このため、使用者は、労働者が自己申告できる時間外労働の時間数に上限を設け、上限を超える申告を認めない等、労働者による労働時間の適正な申告を阻害する措置を講じてはならないこと。また、時間外労働時間の削減のための社内通達や時間外労働手当の定額払等労働時間に係る事業場の措置が、労働者の労働時間の適正な申告を阻害する要因となっていないかについて確認するとともに、当該要因となっている場合においては、改善のための措置を講ずること。さらに、労働基準法の定める法定労働時間や時間外労働に関する労使協定(いわゆる36協定)により延長することができる時間数を遵守することは当然であるが、実際には延長することができる時間数を超えて労働しているにもかかわらず、記録上これを守っているようにすることが。実際に労働時間を管理する者や労働者等において、慣習的に行われていないかについても確認すること。

 

2-2 こっそり、教える、自己申告制が、厳しい理由

上記のガイドラインをみて、あなたは気づいた、だろう。

「自己申告制」だけ留意事項が多いこと、を。

なぜ「自己申告制」だけ、こんなに留意事項が多いのか?

そのこたえは「自己申告制」は、一般的に過少申告の傾向が、強いからだ。

具体的にいえば、タイムカードを廃止し、過少申告によって見せかけの労働時間が減るという現象がある、ということだ。

こういった会社は少なくない。あなたの会社では、どうか?

もし、過少申告が目的で「自己申告制」で運用しているならば、今すぐ見直しをして、ほしい。

 

ステップ3=労働時間の「問題点の摘出」と「解決の行動プロセス」

労働時間の「問題点を解決する」ためには、「本質を理解する」必要がある。

たとえば「始業前準備行為」と「就業後後始末行為」、これらは「会社が考える労働時間」と「労働者が考える労働時間」は違う。

ここを、解決のプロセスとして掘り下げていく。

何が労働時問に「あたる」「あたらない」かを、棚卸し整理をするのだ。

なぜならば、労働時間かどうか、紛らわしいものを、事前に判定することで、揉めることはないからだ。

つまり、先にやっておくということだ。

例えば、研修時間は労働時間から除外している会社は、研修受講が「義務」であれば研修時間は労働時間となる。労働時間から外したいのであれば研修受講は「任意」としなければならない。

始業前の準備行為の時間・就業後の後始末行為の時間 明確な指示がある 労働時間とする
始業前の準備行為の時間・就業後の後始末行為の時間 注意される 労働時間とする
始業前の準備行為の時間・就業後の後始末行為の時間 注意されない 労働時間としない
始業前の準備行為の時間・就業後の後始末行為の時間 黙認 労働時間とする

こういった協議を重ね、「会社が考える労働時間」と「労働者が考える労働時間」、次のように労働時間か、否かを決定するれば、労働時間で紛争は発生しないことに、つながる。

このような問題点のしばり方、すなわち労働時間の「問題点の摘出」と「解決のプロセス」が解決のひとつの決め手となる。

労働時間の「問題点を解決する」を急ぐ会社は、「解決のプロセス」すすめていく必要がある。

 

ステップ4=判決から学ぶ「使用者の指揮命令」と「労働からの解放」

最後は、あなたと、判決をみていく。

「不活動時間」か「労働時間」か、否かは、使用者の指揮命令下に置かれていたかで判断する。

であれば、今回の「仮眠時間」「休憩時間」中の実作業は労働からの解放されていない。

実態として、仕事をしていたことに、なる。

したがって、使用者の指揮命令下にある、これらの「仮眠時間」「休憩時間」は労働時間となる。

さらに、着替え、朝礼に要した時間は、どうだろうか。

この時間も、使用者の指揮命令下に置かれていたものと、判断する。

なぜならば、朝礼への出席、制服への着替えを義務づけられ、事業場内で行うこととされていたからだ。

朝礼25分間を、着替え10分間を要するであれば、この2つの合計35分間は社会通念上必要であったものと、される。

したがって、労働基準法での労働時間に該当する。

あなたの会社の、改善の一助になれば幸いである。

 

最後まで、お付き合いいただき、ありがとうございました。

 

審判

一審(地方裁判所)

裁判所名

千葉地方裁判所

事件番号

平成27年(ワ)1447号

裁判年月日

平成29年5月17日

裁判区分

判決

裁判文

イオンディライトセキュリティ事件,判決文(千葉地方裁判所,平成29年5月17日)PDF(Adobe Acrobat)

参考条文

労働基準法第34条(休憩)PDF(Adobe Acrobat)

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