渋谷区の社会保険労務士、高山英哲です。

みなさん、こんにちは。高山英哲

私は仕事の中で、ありとあらゆる人事労務の難題に直面する。人事労務担当者のあなたも、同じことがいえる。問題解決のために、私たちの存在意義があるといってもいい。

難題といえば「社員逮捕」がある。

多くの人事労務担当者は経験したことがないから、対応がわからない。動揺して考えも出せずに、まずグーグル、ヤフーの検索サイトに頼り【社員、逮捕、会社、対応】で解決策を見出そうとする人事労務担当者が多いだろう。

しかし驚くべきことに、検索サイトに頼って導いた思いつきで、これが当社の考えだ!って。。解決策として動き出しているのだから、恐ろしい話だ。そこで今回は私とあなたで「社員逮捕」について人事労務視点で古い思考から抜け出す方法を考えていく。

知らなきゃ話にならない、逮捕から判決までのながれ8つのポイント

ここからは解決しなければならない問題の解決策を導き出す。基礎からやるから、最後までついてきてほしい。まずは刑事手続きの概要だ。端的いえば「逮捕から判決までの流れ」は、次のとおりだ

罪を犯した疑いがあって逮捕・勾留された場合、刑事訴訟法等にのっとり、刑事手続きによって処理されることとなる。この期間は身柄が拘束される。あなたの社員は当然仕事がでいない。ここは押えておきたい。

逮捕から判決までの流れ 
①逮捕 警察での取調べ 48時間以内
②送検 検察での取調べ 24時間以内
③勾留請求 10日以内
④勾留延長 10日以内
⑤起訴、略式起訴、不起訴 保釈される場合がある
⑥裁判
⑦判決
⑧有罪または無罪 有罪になった場合は実刑または執行猶予

あなたが刑事手続き全体の流れをある程度把握しておくと、対処がしやすくなるだろう。このように警察に逮捕されると最大で23日間、身柄が拘束され警察や検察による取り調べがなされて、起訴・不起訴が決まる。起訴・不起訴はあくまで刑事手続きの問題である。それゆえ使用者が行う懲戒処分の可否を左右するものではない。

起訴・不起訴が決まるまでの間、使用者の懲戒処分が制限されることもないが、社員に弁明を与えない中で結論を急いではならない。これは私からの忠告だ。逮捕・勾留されている期間は労務の提供が不可能であるが、犯罪の嫌疑がないことが明らかになれば釈放される。

しかも捜査継続中であっても、逃亡や証拠隠滅の恐れはないとして釈放されることもあるし、公判請求という形で起訴された場合であっても、裁判所により保釈が認められ、裁判は継続しているものの身柄の拘束はされていないということもあり得る。

よって刑事手続きにおける最終結論は出ていないものの、出社して労務提供は可能な状況にある。つまり私がいいたいことは、こうだ。釈放されれば、あなたの社員は会社で仕事もできるということだ。

 

絶対に必要な検証のプロセス

こうした「逮捕から判決までの流れ」を知ることで、次の検証プロセスへと移ることができる。逮捕というとテレビドラマ、映画から受けた固定観念がある。この種の話題は盛り上がる時があるだろう。

しかし固定観念ほどアテにならないものはない。よってここからは過去の体験、先輩から聞いたことも含めリセットをし解決策へと動く必要がある。では検証のプロセスをどう構成していくか。その順序は次のようになる。

①サーチ&リサーチ②社員の出勤・有給・休職などの協議③会社内、取引先、警察など説明、対応を検討 

①サーチ&リサーチ(情報提供・調べる)

家族からのサーチ&リサーチ

家族から第一報があったり、家族が本人と面会等している場合、通常は家族から話を聞くことになる。だが家族といえども必ずしも本人の状況や意思が十分に分からないこともある。

社員からのサーチ&リサーチ

身柄拘束されている本人とは、電話やメールで連絡をとることができない。さらに逮捕されてから勾留請求がなされるまでの聞け、弁護士以外は本人と会うことができない。

とはいえ勾留後は、原則として接見という手続きで面会することができる。接見は、本人が勾留されている警察署や拘置所の接見室で、職員の立ち会いの下に行われる。ただし、いつでも自由というわけではないし、1日に面会できる人数に制限があったり、また、取り調べのために本人が検察庁に出向いて不在であるなど、会えない場合もある。

したがって、事前に身柄が拘束されている警察署等に電話連絡をし、本人の所在などを確認したほうがよいだろう。接見時間は短く制限されているので、事前にどういったことを話すのかまとめておくことだ。なお身柄が拘束されていても接見禁止となっていなければ、手紙のやりとりをすることはできる。

早い段階の接見で確認すべき事項としては次の4点だ。

①犯行を認めているのか否か②弁護人選任の有無③勤怠処理方法の確認④今後の就労についての考え。

 

弁護士からのサーチ&リサーチ

社員が弁護士を選任している場合、当該弁護士と連絡をとることとなる。今後の見通しなどの情報を得るのも一つの手段である。弁護士は職員や警察官の立ち会いなく、また、時間の制限なく本人と面会することができるなど、より詳細な情報を把握していることが多い。ただし、弁護士は本人の同意がなければ会社に情報を開示することはできないから、期待しているような情報が得られないこともある。

 

②社員の出勤、有給、休職などの協議

本人が逮捕・勾留中の期間

身柄拘束中は会社に出勤できず仕事はできない。では、この間の勤怠についてはどうすればいいか。そう、本人から有給休暇取得の請求があれば、これを認めざるを得ない。また有給休暇の残日数がなくなった場合には、欠勤として取り扱うことになる。

会社に起訴休職制度がある場合にはどうするか。当然適用を検討する。さらに家族からの有給休暇申請をどう考えるか。体調不良での欠勤の連絡を家族が代わって行う場合と同様、本人の意思であることが疑われる事情がない限りは、有効と取り扱うべきであろう。

判決が確定するまでの期間

刑事手続き上、起訴・不起訴が未確定な段階での釈放、あるいは起訴後に保釈された場合、社員を出勤させるかどうかが問題となる。この場合には、出勤させることも、混乱を避けるために業務命令として有給での自宅待機を命じることも可能である。

会社によっては、起訴休職制度を有している場合かある。一般に起訴休職は無給である。保釈されていて仕事が可能な場合でも該従業員を起訴休職に付することができるのは、当該従業員が起訴されたこと又は起訴後も引き続き就労することで企業の対外的信用が失墜。

加えて職場秩序の維持に障害が生ずるおそれかおる場合、社員の労務の継続的な給付や企業活動の円滑な遂行に障害が生ずるおそれかおる場合に限られている。よって起訴休職の適用は慎重に対処すべきである。

 ③会社内、取引先、警察など説明、対応を検討

会社内、取引先の対応

社員が長期間にわたって職場を不在は職場の同僚あるいは取引先に、どう説明をするかが問題となる。

刑事事件においては判決が確定するまでは「無罪の推定」である。仮に報道がなされている場合にはやむを得ないとしても、取引先に対してむやみに開示することは控えておくこがいいだろう。社内においても、上司や同じ部署の者など必要な範囲での伝達にとどめるべきである。

警察の対応

社員が逮捕・勾留されたことに関連し、警察から社員の出勤状況を確認できる資料、パソコン等の提供、同じ部署の役職者など事情聴取に応じることを求められることがある。通常こういった捜査は任意を前提とする手続きで行われる。

この際、労働者の個人晴報も開示する場合かあり、個人晴報保護法との関係が問題となる。行政解釈としては、照会に応じなかった場合の罰則はないものの、法令上の義務があるとして、個人晴報保護法23条1項1号に該当し、本人の同意なく提供しても個人晴報保護法違反にはならないとされている。

ただし、開示する情報によっては、民事上の損害賠償請求の対象となり得る可能性は皆無ではない。したがって目的や対象となる事項を確認し、必要な情報に限り提出するべきである。

 

社員の意思確認の方法 混同してはならないポイントとは

判決が確定する前に、社員から退職の意思表示がなされる場合がある。この場合は、通常どおり退職の手続きをすることとなる。

社員が身柄拘束中の場合は退職手続きの際に必要な書類を接見に行って差し入れる、または弁護士を経由して渡し作成してもらうのが原則である。確かに退職の意思表示は口頭でも可能であることから退職届などの書面は法律上必須ではない。

しかしながら身柄拘束中の状況下であり、また退職の意思表示が家族や弁護士などを介してなされた場合もあること、加えて退職の意思の有無をめぐる疑義が生じることを避けるため、書面を取得しておくべきであろう。

事総務担当者のあなたは法律上のことと混同せず、意思確認方法を怠ってはならない。

 

社員逮捕の課題:解決策にならならい結論を、結論にしていないか。

ここで整理をしておこう。
どのような社員の逮捕でも、これまで示してきた流れを踏襲しなければ解決は難しい。

頭の中でこの流れでなければ物事を受け入れることができないようにできている。なぜなら既に構成されている固定観念が邪魔をするからである。特に長期雇用者である管理職はこの傾向が強い。社員、会社内、取引先を納得させ心を動かすには、ステップを踏んだ解決策を打ち出しだ結論が必要である。あなたならば理解できるだろう。

多くの会社で行われている社内会議は支離滅裂、っていうか順不動のものが多い。

なぜなら感情論にまかせて出てくる「言いたい順序」でチャプターが構成されているからだ。これは「社内で納得する順序」にはなっていない。よってとりあえず結論を出すが、呆れたことに後々になって「やっぱり違うのではいか」「あの件はもう一度考え直そう」という話が出てきてしまい流れがストップする。

再び時間をつくっても感情論にまかせて出てくる「言いたい順序」での協議は終わりがない。
つまり「おしまい」がないのである。

したがって、感情にまかせた解決策にならならい結論を、結論にしてはいけない。ステップを踏んだ解決策を実行することである。

 

裁判の傍聴で、あなたが考えることは、ひとつだけ

人事総務担当者のあなたは懲戒解雇も視野に入るような事案では裁判を傍聴する必要がある。なぜならばより多くの判断材料のサーチ&リサーチを得るためだ。あなたもご存知のとおり公判手続きは公開の法廷で進められている。ゆえに誰でも傍聴することができる。加えて裁判を傍聴することにより、当該事案の全体の事実関係および最終的な刑事処分内容を把握できる。

裁判の傍聴であなたが考えることは、ひとつだけである。それは社員の懲戒処分についてである。

当然懲戒処分の時期と懲戒処分の可否・内容が問題となる。懲戒処分の時期逮捕・勾留されたといえども、上述の刑事手続きにおける無罪の推定の原則により、最終的には懲戒処分については、懲戒処分の時期と懲戒処分の可否・内容が問題となる。

懲戒処分の時期は逮捕・勾留されたといえども、上述の刑事手続きにおける無罪の推定の原則により、最終的には判決に至るまでは有罪か無罪かを確定させることはできない。また、本人の身柄が拘束されている聞け、上述のとおり十分に本人から事情聴取などを行えないし、社員が犯行を否認していることもある。

特に本人が否認している場合には、えん罪の可能性もある。

それゆえ判決が出される前に懲戒処分を行った場合、後から無罪であると確定したときに懲戒処分が無効となる恐れがある。したがって、原則は仮に有罪だった場合の処分について一定の考えは持ちながら対処する。最終的な懲戒処分については、有罪か無罪かがはっきりしてから行うのが妥当である。

ケースにより釈放されて在宅で捜査の場合は刑事手続きに時間が掛かる。結果を待って処分の時期を失することもある。社内協議は不可欠だがこの場合は本人から事情を聴取し、弁明の機会を与えた上で、懲戒処分を先に実施することもあり得るだろう。 

なおマスコミ報道で、会社の評価を著しく低下させる恐れのある重大な犯罪の嫌疑が濃厚であるようなケースがある。例外的対応として、早期の段階で懲戒処分に踏み切ることも検討せざるを得ないときがある。

優秀なあなたならば出来る。
面倒とは思わずに、ケースバイケースで感情を入れずに淡々とすすめてほしい。

今後も変わらない、懲戒処分の方法

最後にあなたと「社員逮捕」における懲戒処分の可否・内容を含めた方法をみていくこととする。通常の懲戒処分の流れは次のとおりだ。

①処分内容の検討→②就業規則の懲戒事由の基づく手続き→③懲罰委員会の実施→④社員に弁明の機会を与える→⑤懲戒処分内容の決定→⑥懲戒処分

多くの企業において会社の名誉を失墜させたことや刑罰法規に触れる行為を就業規則上、懲戒事由としている。ゆえに勤務時間外の私生活上の非行においてもこれらに該当するとして懲戒処分を行うことも多い。これはあなたも異論ないだろう。

しかし会社は、労務遂行に関して社員を規制をできない。
私生活についてまで一般的支配を及ぼせるものではない。

したがって、企業秩序に直接関連するものや企業の社会的評価を下げる恐れのあるものである。例えば当該犯罪行為が重大事犯であり、企業名とともにマスコミ報道された、長期間の欠勤となり労務提供ができなかった場合に限り懲戒処分ができる。

これには就業規則の懲戒事由にそって社内で協議をすること。懲罰委員会の中で社員の弁明の機会を与えることも不可欠だ。

必ずしも具体的な業務阻害の結果、取引先への不利益の発生を必要とするものではない。会社の事業の種類、態様、規模など経営方針およびその社員の会社における地位・職種等諸般の事情から総合的に判断することを期待する。

最後までお読みいただきありがとうございました。

社会保険労務士、渋谷区の高山英哲でした
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